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■キディ・グレイド理論物理学的考察雑記(2)

キディ考察雑記(1)は数式ばっかりで訳判らんともっぱらの評判だったので、(2)ではちょっと趣旨を変えて「用語集」っぽいことに専念してみようかと思います。
ただしちゃんとした理論的考察に基づいてない分、知識としての怪しさは大爆発ですが。

・「小指の先ほどの肉のかけらから精神と記憶の再生まで可能とする」

言わずと知れたサウンドレイヤー#2Intermission第3回「GOTT最強の二人」中のプロフェート管理官の台詞ですが、この実践方法を考えてみようかと思います。ここに挙げた方法はあくまでも↑の台詞を実現させる方法の一例ということでご了承を。
まず精神と記憶とは何か。ようするにそりゃ脳の働きです。魂だとかなんだとか超自然的な理屈を持ってきても構わんのですがまあここでは一応科学的に脳の働きオンリーということにしておきます。
じゃあ脳の働きというのは何か。それは脳細胞の形態、およびそれらの相互間接続網いわゆるシナプスというもの、それからその脳細胞とシナプス中を通る神経伝達物質の分布です。実際に現在では、記憶というものは脳中の海馬という領域の脳細胞の形を変えることによって保持されてるんではないかと言われてます。
ということはそういった脳細胞の形だとか情報網だとか、そういう事に関する情報を小指の先ほどの肉の中に突っ込んでおきゃいい訳ですね。さあどういう手段を使いましょうか。
いちばん簡単なのは細胞のDNAの中にそれらの情報を突っ込むことです。DNAというのは実は情報を伝達する手段とサイズとしては無駄だらけで、実際に遺伝情報の伝達手段として使用される領域(これをエキソンと言います)はごく少数、大半はイントロンという意味のない塩基配列のだらだらした繋がりです。ヒトにおいてエキソン領域は全体の2〜3%、ようするに実際の遺伝情報として使用されている領域はその程度なんではないかと推測されています。
一倍体ゲノムの塩基対数はヒトで3×109(30億塩基対)程度でその大半がイントロンであり、ほぼその全て(というか二倍体生物であるヒトで考えるならその倍)が勝手に使ってくれ状態のフリースペースであるともいえます。
このフリースペースに先ほどの「精神と記憶の情報」、要するに脳細胞の形状とその相互接続情報とその中の神経伝達物質に関する情報を突っ込みます。たぶん容量的には大丈夫な気がする(※容量に関しては下のほうで考察)。
技術的にも大丈夫。ウイルスとかプラスミドという生物とかを利用すれば遺伝子中の情報を書き換えるのは割と簡単です。これはいわゆる「遺伝子組み替え技術」というやつで現在すでに実践されています。今はまだ発展途上の技術ですが、星暦スターズセンチュリーを待たなくてもまあ100年以内には完璧な形で実現できるようになるでしょう。
では実際の使用方法!
デッキーやシニーは体内でウイルスなりプラスミドなりナノマシンなり何なりを飼っておいて、そやつらに自分の精神と記憶(=脳細胞の形態とシナプス情報)に関して常時DNA中にバックアップを作成させておきます。ついでに肉体や容姿に関する情報も記録しておいて損はないと思う。
で、戦闘なり何なりで肉片になったら、肉片中のDNA情報からそれらを再現させます。栄養たっぷりの医療カプセル中で培養させておいて適切な遺伝子調節タンパク添加しておけば勝手に増えるので大丈夫。あっという間にデッキーorシニー(精神と記憶付き)の出来上がりです。
この方法の良い所は、もしバックアップ情報が細胞1個のDNAに入りきらない場合でも、複数個の細胞にそれぞれ別の情報を残しておくことによって理論的にはほぼ無限大のバックアップデータを保持できることです。
ただしこの方法には欠点がいくつか。
ばらばらになったデッキー(orシニー)の肉片を全部別々の医療カプセルで培養しちゃったりなんかすると、それぞれの肉片からデッキー(orシニー)が何人も何人ももこもこ再生してきたり……うあ”〜(T□T)(←想像してちょっと気持ち悪くなった)
さらにこの方法を用いると、子供ができません。いや正確に言うと子供は作れるんですが、精神と記憶までそのまま引き継いだ子供になります。すでに子供っちうか複製。
これでは具合が悪いので対策を講じることにしましょう。
まず方法の1つは「身体の特定の部位の細胞のDNAにバックアップデータを取る」ということです。これだとその特定部位を含んだ肉片だけがデッキーorシニーとして復活することになり、大量発生は防げますが、しかし肉片でばらばらになった時、バックアップデータが含まれてる肉片がどれか一つ一つ探さないといけません(なんだか想像がスプラッタになってきたな……)。おまけに目的の身体部位が破壊されて細胞とDNAが跡形もなくバラバラになったりしてたら復活は永久に不可能になります。いかん、これじゃ駄目だ。
という訳で、「復活時に用いる遺伝子調節タンパクを特別なものにする」というところでどうでしょう。
実は遺伝子が遺伝子として働くためには、その働きを促す遺伝子調節タンパクというものが必要です。この遺伝子調節タンパクが体内で生産される場所とタイミングとがそれぞれ異なっているために、たった1対のDNAから皮膚の細胞ができたり神経の細胞ができたり筋肉の細胞ができたり(もっと言及すればそれらを構成するタンパク質ができたり)するわけです。
なので「DNA中のバックアップデータから精神と記憶(を構成する脳細胞の形態とネットワーク構造に関するデータ)を発現する際の遺伝子調節タンパクを特別なものにする」という風にします。で、デッキーやシニーが肉片から再生する時だけ、肉片入りの培養液にその遺伝子調節タンパクを添加する。こうするとデッキーシニーが再生するのはその培養液に入ってる肉片だけで、通りすがりの人がたとえ肉片を拾ったとしても(拾うのか?)その肉片からは再生不可能ということになります。特別遺伝子調節タンパクの生成と流通はGOTTがセブンスゲート研究所から占有権を受け取って一元的に管理すればいいわけだし。おお、完璧じゃん。
唯一の欠点といえば、いちど肉片になってしまうと自力では復活不可能ということでしょうか。まあその辺りはパートナーなりGOTTなりがちゃんと対応してくれるでしょう。
という感じで、なんだか最後は雰囲気が13日の金曜日っぽくなってしまいましたが一応考察してみました。


※「脳細胞の形状とその相互接続情報とその中の神経伝達物質」に関する情報の容量(サイズ)について。

精神と記憶(を形成する脳細胞データ)は本当にDNAの無駄スペースに収まりきるのでしょうか、実際のデータ量で検討したいと思います。
まずデータ元の脳細胞の数ですが、140億個とも150億個とも言われています。……う、しまった、ここでなんだか悪い予感が。だってDNAの無駄スペース、二倍体(1対)のDNAでも60億しかないし……。
まあいいか。とりあえず脳細胞150億個のうち、精神と記憶に関連している領域をその1割、15億個と見ます。これが実際の数より多いか少ないかは残念ながら見当がつきません。とりあえず推測で。
さて脳細胞1個をデータとして残すのにどのくらいの容量が必要でしょうか。これは絵や立体といったアナログなものが、画像データやCADデータなどのデジタル情報としてパソコンに保存できるのと同じような原理でデータとして残すことができます。
そこで脳細胞のデータをデジタル化したときのサイズを、かなり大雑把に20Kbと見積もります。そのくらいの容量があれば脳細胞の形状もだいたい記録できるんではないかと推定してのことです。
パソコンは0か1、つまり2進数で情報を記録します。0または1というデータを1ビット、それが8つ集まったものを1バイトと呼びます。先ほど見積もった脳細胞1個あたりのデータ容量は20Kb=20キロバイト=20×8キロビット=160キロビット=160×キロ(103)ビット=16万ビットです。
このデータを保存できるDNA塩基対の数はどのくらいでしょうか。DNAではグアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、アデニン(A)という4種類のデオキシリボ核酸(DeoxyriboNucleic Acid)によって情報を保存している、いわば4進数コンピュータのようなものです。この方法だと2進数での16万ビットは4進数の8万ビット、つまり8万塩基対に相当します。これが脳細胞1個あたりのデータですから、精神記憶脳細胞推定15億個分のデータ量は15億×8万=120兆塩基対必要です。これをDNAの無駄スペース60億で割ると……2万個のDNA塩基対、つまり2万個の細胞が必要ですね。
細胞1個あたりの重さは1×10-9g、つまり10億分の1gだそうです。ということは2万個の細胞は……0.00002グラム? おお、良かった。余裕やん。
小指の先の肉の量を1cm×1cm×1cm、つまり1立方センチメートルとすると、人間の比重は水に浮くか浮かないかのちょうど1g/cm3くらいですから、小指の先の肉の重さは1g、精神と記憶に関する情報を保存してなおかつあとその50000倍くらいのデータが入れられます。
バックアップデータを取る脳細胞の数を増やすも良し、データの精度を上げるも良し。
本当は細胞1個のDNAの中にデータを全部詰めたかったのですが、それはどうやら無理っぽそうですね。まあこれはこれでいい感じです。


■訂正履歴
(20031017)桁が間違ってました。最後には2桁ぶんも。というかこれで本当に正しくなったのかどうかも自信がない。



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2003- Hisagi