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■キディ・グレイド理論物理学的考察雑記(1)

公式設定資料集の発売は延期。勝手にやってくれということか?
ならお言葉に甘えて、ということで、キディに出てくる能力・用語を勝手に推定して設定としてまとめてみようと思います。非公式設定資料集も作りたいしねー。

最初にご注意。
楸は理論物理学の専門家でもなんでもなく、図書館に置いてある物理学の入門書を数冊読んだだけの素人です。
「本から知識として手に入れたこと(要するに正しいこと)」と「それらから推定したこと(要するに正しいかどうか判らないこと)」はなるべく区別して書くように注意するつもりですが、知らず知らずのうちに嘘八百を並べ立ててるかもしれないので注意。
専門家の方へ。以前は「見過ごしてくれ」と言ってたんですが、チャンドラセカール限界質量で反省しました。間違いがあったら見過ごさずに指摘してください、よろぴこ(涙)


■エニウェア・ウェネヴァについて考える

一応ここはデクシニサイトなので、考察も↑から始めるのが最良ではないかと思います。
さてデクステラの能力エニウェア、シニストラの能力ウェネヴァ。具体的にどういう能力なのでしょう。
公式サイトの人物紹介では「エニウェア:空間絶対座標の感知」「ウェネヴァ:時間絶対座標の感知」と書いてあります。ここでさっそく物理屋さん(私含む)から「んなことあるか」とツッコミが入るところですけどね。そのツッコミの理由は後ほど。
それはともかく、「感知」だけじゃないですよね。明らかに。
デクシニスト垂涎のTVアニメ第17話、「Phantasm/Reborn 新生」ではデッキーがシニーを連れて空間移動した様子が描写されてましたし(お姫様抱っこというご意見もあったが転移後の体勢からして私はぎゅうぎゅう抱き締めまくりの密着状態で飛んだのではないかと思ったり)、サウンドレイヤー#2の第16話「沈黙は金、雄弁は銀」ではエクリプス局長がシニストラと「私は貴方と違って、時を見通す力は持っていません」「俺だって、そんな未来は見たくはありません」なんていう会話を繰り広げてましたし。
ということは少なくとも「感知する」だけでなく
エニウェア:空間を移動できる
ウェネヴァ:未来を見ることができる
ということになります。この時点で、2人の能力に適用できる理論物理学にある程度の制限が出てきます。

星歴時代はどーだかわかりませんが、とりあえず現時点のAD世紀で時間や空間をひん曲げられる物理理論というのは3つくらいしかありません。
一般相対性理論、量子力学、およびそれらの上位理論(であるとゆーもっぱらの噂の)超ひも理論です。
少なくとも私が思いつくのはそのくらい……。
ではそのそれぞれについて、どういう方法で空間あるいは時間が曲げられるのかを解説し、最後にエニウェア・ウェネヴァについてどの理論が一番適切に当てはまるかを検討することにします。

・特殊相対性理論
一般相対性理論はかの有名なアインシュタインが大成した理論です。この理論では空間・時間は「歪める事が出来る」のではなく「歪んでいるのが普通の状態」ということになっています。それはこの宇宙に質量を持つ物質が存在することによって、必然的に起こる事実なのです。
質量が時間と空間を歪める経緯について、順を追って説明するために、まずは特殊相対性理論からご紹介したいと思います。

特殊相対性理論をアインシュタインが1905年に発表するまでには様々ないきさつがあったのですが、とりあえずこの理論で示され、また数々の実験によって証明された事実を1つだけ把握しておいてください。
「光は秒速30万キロメートルで進む」
ということです。
よく言われる「1秒で地球を7周半」っちゅーやつですが、実はこれ1つが事実であると証明されたために時間と空間はその絶対性を失うことになってしまいました。
例えばここで、懐中電灯をんぺっと光らせてみることにしますね、んぺっと。さて懐中電灯から発せられた光は1秒間でどのくらい進むでしょう。30万キロメートル、そのとおりです。
ではそうしたら、懐中電灯をんぺっと光らせたと同時に、あなた自身が光の半分の速度、秒速15万キロメートルでその光を追っかけていくとします。さて1秒が経過したとき、光の先頭とあなたとの距離の差はいくらでしょう?
光が秒速30万キロメートルで進んで自分がそれを秒速15万キロメートルで追っかけたのだからその差は15万キロメートル、普通はそう考えますね。
けど実際は違うのです。1秒が経過したとき、追っかけていったはずのあなたと光との距離の差はやっぱり30万キロメートルなのです。何回測ってもそうなるのです。
???おかしいですよね。
ここで一つ、上記の文章に付け加えなければならないことがわかります。つまり「光は(どういう動きをしている観測者に対しても)秒速30万キロメートルで進む」と言わなければならないのです、正しくは。追っかけようが追っかけまいが光は常にあなたから秒速30万キロメートルの速さで離れていくのです。だから1秒を経過した時点であなたと光の先頭との差が30万キロメートルになっているのです。何故と言われても実際に測ってみたらそうなるんだから仕方ありません。
?????それってどゆことやねん?
この問題を解決するために、デクステラさんとシニストラさん、それからセンチュリオンにご協力頂きましょう(笑)

まずセンチュリオンには赤のユニコーンαと青のユニコーンβに分裂してもらって、それぞれデクステラさん、シニストラさんに操縦してもらいます。
シニストラさんは青いユニコーンβを操縦して宇宙空間を飛んでいます。
デクステラさんは静止した赤いユニコーンαの中からそれを眺めています。
シニストラさんはデクステラさんの目の前を横切る時、コンソールを操作して天井の明かりを真下に向けてぴかっと光らせました(ちゃんとデクステラさんに手を振ることも忘れませんでした)。そしてそのままデクステラさんの前を通り過ぎました。
デクステラさんは「ユニコーンβの天井で光った明かりが真下の床に到着するまで(ほにゃほにゃ)秒かかった」と言います。この(ほにゃほにゃ)秒をt秒とします。
一方シニストラさんは、「天井からの光が真下の床に着くまで(むにゃむにゃ)秒かかりましたよ」と言います。ところがこの(むにゃむにゃ)は、デクステラさんの報告してくれた(ほにゃほにゃ)と一致しないのです。なぜだか。
仕方がないので、この(むにゃむにゃ)秒をT秒と表すことにします。
ユニコーンαは、ユニコーンβの速度を「秒速(ぴこぴこ)キロメートル」であると報告してくれました。この(ぴこぴこ)を秒速vキロメートルとします。びょうそくはーときろめーとると読んではいけません、びょうそくぶいきろめーとるです。いや別に読むだけならどう読んでも構わんけど。

それでは、まずはデクステラさんの言い分を検証してみることにしましょう。

デクステラさんの目の前で、光はユニコーンβの天井から発せられて、その真下の床までの経路を進みました。デクステラさんに対してユニコーンβは横向きに動いていましたから、デクステラさんから見た光の経路は斜めに走ったことになります。



さて、この光の進んだ距離はどのくらいの長さになるでしょう?
先ほどの解説にもあった通り、光の速度はいついかなる時にも秒速30万キロメートルです。この光の速度=秒速30万キロメートルを便宜的に秒速cキロメートルと表すことにします。c=30万です。
デクステラさんはこの経路にかかった時間をt秒であると報告してくれました。光は秒速cキロメートルの速度でt秒間進んだのだから、その経路の長さは「秒速cキロメートル×t秒=ctキロメートル」になります。

それでは、このt秒間の間にユニコーンβが飛んだ距離はどのくらいでしょうか?
ユニコーンβは秒速vキロメートルの速度で飛んでいたそうですから、t秒間の間でしたら「秒速vキロメートル×t秒間=vtキロメートル」の距離を進んだことになります。これがユニコーンβの進んだ距離です。



では次に、シニストラさんの言い分について検証してみましょう。
光はユニコーンβの天井から真下の床に向けて発せられたのですから、ユニコーンβの中にいたシニストラさんから見れば光は真っ直ぐ下へと走ったことになります。
この光の速度も、やっぱり秒速30万キロメートル=秒速cキロメートルです。光はどんな時も、誰に対してもこの速度で走ることがわかっているからです。
シニストラさん曰く、光が床に着くまでT秒間かかりました。 そうすると、光が天井から床へと走った距離は、「秒速cキロメートル×T秒間=cTキロメートル」になります。



これで3つの値が出揃いました。
デクステラさんから見た光の経路の距離ct、シニストラさんから見た光の経路の距離cT、ユニコーンβの進んだ距離vtです。
この3つの長さのみを図示すると次のようになります。



この3つの長さの関係を式に表そうとすると、どうすればいいかわかりますか? ポイントは右下の直角印です。
直角三角形と言えば。
そうです、三平方の定理です。

  (ct)2=(cT)2+(vt)2

この方程式をTについて解きます。



最後の式のうち、ルートのついた項は常に1より小さくなります。
つまりTはtより必ず小さくなるということです。
これがどういうことかわかりますか?
シニストラさんにとっての時間Tはデクステラさんにとっての時間tよりも短くなるということ、つまりシニストラさんはデクステラさんよりもどんどん若くなってっちゃうということなのです!
大変です! 同い年のはずの2人に歳の差が出来ちゃいます! いやむしろ歓迎という方もいらっしゃるでしょうがここではいちおう大変ということにしておきます!
仮にユニコーンβの速度vが光の半分、つまり先ほど光を追っかけた速度である秒速15万キロメートルであったとします。
この値、つまりv=15万と、光の速度c=30万とを上記の方程式に代入すると、T=(ルート3)/2×t=0.866tとなります。
デクステラさんにとっての1秒はシニストラさんにとっての0.866秒、デクステラさんにとっての1年365日はシニストラさんにとって316日にしかなりません。
従いまして、ここでひとつ判明することがあります。

「高速で動いている人(物体)の時間は短くなる」

ということです。
詳しい説明は疲れたので省きますが(ヲイヲイ)、同様に空間についても「高速で動いている人(物体)の長さは短くなる」ということが言えちゃったりしちゃいます。
最初に言った「空間絶対座標、時間絶対座標の感知というのはナンセンス」ということの理由はここにあります。なぜなら、空間も時間もその長さはその人(物体)の運動次第であり、誰にも共通する空間、時間などというものは存在しえないからなのです。
相対性理論が相対性と言われる由縁はこのあたりに(も)あります(実際の理由はちょっと違う)。なおかつ相対論は膨大な量の実験によって正しいことが証明されていますから、この宇宙で生活する限り、好き嫌いに関わらず私たちは相対論に従わなくてはならないのです。

「アインシュタインが劇的な発見を世間に伝えてから一世紀近くになるが、依然としておおかたの人は空間と時間を絶対的なものとして見ている。特殊相対性理論が直感的にはわかっておらず、実感がないのだ。理由はごく単純だ。特殊相対性理論の効果はどのくらい速く動くかによるのであり、車や飛行機の速さでは、それどころか、スペースシャトルの速さでも微々たるものでしかない。ところが、光速と比べてもそれほど遅くないような速さで飛ぶ未来の宇宙船で旅をすれば、相対性理論の効果ははっきり目につくようになる。」
(「エレガントな宇宙」草思社、一部省略)

↑なんかすげぇタイムリーに読んでた本の中にタイムリーな記述があったので引用してみました。
公式設定を作った人々は「おおかたの人」の方に入っちゃったのかしらん。それとも私の考えている以上の深遠な設定があるのかしらん。
なにはともあれ、ここまでまじめに読んだ人お疲れさま!
これでなんとなく時間と空間を操作できないこともないような気分になってきたよねっ!

時間と空間は絶対的なものじゃなくて、動かすことができて、動かす理論ももう21世紀の私たちは知ってるのです。

しかもその理論の解説もまだ一般相対性理論(重力)、量子力学(量子トンネル)、超ひも理論(プランク長さに縮まった6次元)とまるまる3つ残ってるのさ!
特殊相対論なんてほんの小手調べ!
頑張れ私! これくらいで疲れてる場合じゃないぞ!(笑)


※余談ですが上記の実験で発生したデクステラさんとシニストラさんの歳の差は、デッキーがユニコーンαで飛んで、先のほうで静止して待ってるシニーを迎えに行けば打ち消されて帳消しになります。逆にデッキーが静止したまま、シニーが途中で反転してデッキーのところに戻ると、上記で発生した歳の差とちょうど同じ分だけの差がさらに開いちゃいます(笑)


■訂正履歴
(20031017)微妙に訂正。ユニコーンβ自身に速度の報告をさせると静止系(デクステラさんとユニコーンα)からずれそうな気がしたので。



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2003- Hisagi